第70回日本アレルギー学会学術大会

会長挨拶

会長挨拶 “Patient-centered Medicine とAllergy Scienceの結晶化”

第70回日本アレルギー学会学術大会会長
埼玉医科大学呼吸器内科教授、埼玉医科大学病院アレルギーセンター長
永田 真

 第70回日本アレルギー学会学術大会を、埼玉医科大学呼吸器内科学教室・埼玉医科大学病院アレルギーセンターが担当させていただきます。
 アレルギー疾患は増加し続け、臨床現場での重要性はますます高まっています。アレルギー疾患の多くは若年期から発症しやすく、容易には治癒し難く、しばしば生涯にわたって患者を苦しめることが大きな問題です。またもうひとつの重要な特徴は、単一病因アレルゲンが同一の患者において、複数の臓器に疾患を発症することです。すなわち、アレルギー科領域ではしばしば生涯にわたって複数のアレルギー疾患を管理・治療する必要性が高いのですから、単一疾患あるいは一臓器をみるのでなく、患者中心的に、包括的な管理治療が望まれることには論を待ちません。日本アレルギー学会とは、専門医制度を擁する臨床的重要性の高い領域についての学会であって、とくに多彩なアレルギー疾患に悩む患者を高度専門的にかつ包括的に診療でき、患者を幸福にできる“トータル・アラージスト”の育成に力点をおくべきと考えます。その視点での近年の最大の進歩は、我が国での主要2大アレルゲンである家塵ダニとスギ花粉に対して、アレルゲン免疫療法が導入されてようやく開花してきたことであり、今後さらに効果的に普及されていくべきであることであります。もうひとつの大きな進歩として、重症アレルギー疾患に威力を発揮する、各種生物学的製剤の登場と普及があげられます。これらは例えば重症喘息ではその臨床表現型によっても使い分けられてきましたが、近年は特に合併する各種の重症アレルギー疾患への効果をも鑑みて、Precision Medicine的に使い分けられる時代が到来しており、その確立と普及が重要なテーマとなっています。
 私どもの埼玉医科大学では早くからアレルギー科領域の重要性を指摘してきており、2005年には埼玉医科大学病院にアレルギーセンターが開設され、アレルギー疾患の包括的・専門的治療の提供と、“トータル・アラージスト”の育成を目指して粉骨砕身してまいりました。本学はまた、大学としての基本的な方向性として“Patient-centered Medicine“を重要視しております。この本学的土壌を背景に、いまという時代・時勢、患者さんたちの要望、そして学会員の到達すべき目標等を鑑みつつ、学術大会のテーマを“Patient-centered Medicine とAllergy Scienceの結晶化”とさせていただきました。
 本学術大会は記念すべきことに第70回目の節目の大会となり、また仕切り直しとなった東京五輪開催予定の年ともなります。そしてなによりも、人類がCOVID-19に対して勝利する年の学会となることを期待し、会長を担当させていただくことを、天と会員皆さまとに、深く感謝いたしております。そして近年充実した進展を示すAllergy Scienceが実際のアレルギー患者さんのための“Patient-centered Medicine”におおいに還元されてゆく有益な学術集会となり、新しい時代の幕開けの一端となることを祈っております。なお本学術大会は、いわゆるハイブリッド形式での開催を予定しております。メイン会場はパシフィコ横浜ノースで、2021年10月8日(金曜日)から10日(日曜日)までの予定です。多くの皆さまのご参加を心よりお待ち申し上げております。

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